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プーアル茶の神秘を発見する |
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by デヴィッド・キルバーン |
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十年ほど前、新聞の小さな記事で、ミャンマーとの国境に程近い中国雲南省の山頂で大変な樹齢の老茶樹が発見されたことを知った。もともと雲南省は、樹齢千年を越える老茶樹が多いことで知られる地域だが、新たに発見された木は、これまで確認されたどの老木よりも、はるかに樹齢を重ねていた。 のちに中国政府は、この老木は樹齢約二七〇〇年、世界一古い茶樹であると発表した。非常に古い木の場合、幹の中心部が朽ちていることが多く、年輪が破壊されて樹齢をはかるのは非常に困難なのだが、幸い今日では、科学の進歩のおかげでその抜け落ちた部分を解明できるようになっている。 二〇〇五年一月、わたしたちはこの老木を一目見ようと、雲南省を訪れた。半日ほどかけて山を登った末、ようやく目的の木にお目にかかることができた。高さ二十五メートル以上の大木が、神秘的な雰囲気をかもし出してわれわれの前に聳え立っていた。現在も成長を続け、葉をつけているが、この木の茶葉が生産用に収穫されることはない。(代官山のティー・ミュージアムに、ほんの一握りの葉が展示されている) 雲南省でみつかる他の茶樹と同じように、この大木の葉は、現代の茶畑で育つ茶樹の小さな葉にくらべて長く幅広だ。(熱帯雨林樹の特徴である) 雲南省に育つ古い木々は、茶樹の祖とされる「カメリア・シネンシス」にもっとも近いといわれる。また、これら老木は、有名な雲南省産プーアル茶の最高品質の茶葉を提供することでも知られる。 プーアル茶は、他のお茶と同じ様に、古くから健康に良いとされてきた。しかしこの特徴に加え、いつのころからか、プーアル茶は脂肪を燃焼し、体を浄化する効能があるといつの頃からかいわれるようになった。現代医学も、ある程度この主張の根拠を認めている。 プーアル茶の名前は、かつての市場町に由来する。今日のプーアル市は、長い歴史をほとんど感じさせない近代的な町だが、昔は地域の生産者、仲介業者、商人たちが行きかう茶葉取引の中心地であった。今でも町の郊外には、商人たちが馬の背に茶葉の袋をくくりつけ、チベットやロシアに向けて旅立った「茶馬古道」の始点があり、かつての名残を感じとることができる。 昔の商人たちは、長く困難な道のり経て、茶葉を運ばなければならなかった。しかしこれが、プーアル茶の発展につながったのだ。大量の茶葉を袋詰めにして、馬の背に乗せて長距離を移動するにはかさばったため、生産者は円形の餅茶やレンガ状の磚茶に茶葉を圧縮するようになった。 長旅の間に、圧縮された茶葉は非常にゆっくりと醗酵し、プーアル茶の特徴である黒い色、温かみのある味に変わっていった。生産者や商人たちが、いつごろこの変化に気づいたのかは定かではないが、すでに一七〇〇年前の記録に残されているので、かなり昔から知られていたと思われる。 ごく最近までプーアル茶は、このように圧縮した茶葉を時間をかけて醗酵させてきた(ただし、馬に担がせる必要はない)。栽培者たちも同じ方法で茶葉を熟成させ、プーアル茶の特徴が自然に引き出されるように保管してきた。その結果、圧縮された緑茶の塊は三年ほどで自然にプーアル茶に変化すると分かるようになった。また、それ以上寝かせるとさらに風味はゆっくりと変化しつづけるが、十年を過ぎると味にさほど変化はみられなくなることも判明した。しかし最終的には、風味の判定は個人の好みによるのだが。 このように、プーアル茶は出来上がるまでに非常に長い時間がかかるため、在庫はつねに不足気味で、急な需要にすばやく対応することができなかった。 しかし一九五〇年以降、プーアル茶に対する需要が増えたため、生産過程を早める技術が模索されるようになった。その結果、醗酵を促進する技術が編み出され、三年以上も待つことなく、数ヶ月でプーアル茶を生産できるようになった。新技術では、乾燥した茶葉の山に水をかけ、温かく湿った環境で醗酵させる。今日、市場に出回っているプーアル茶のほとんどが、この製法で作られている。茶葉の品質と製造者の技術によって、伝統的な方法で製造されたプーアル茶に近いものが出来上がることもあれば、粗雑な製品になることもある。その違いは、飲んだときにしかわからない。 したがって、熟成期間が十年までのプーアル茶は数多く見つかるが、それ以上のものになると、もともとの生産量が少ないため、なかなか手に入らなくなる。それでも、二十年、三十年、たまに四十年物のプーアル茶にお目にかかることはできる。しかしそれ以上のものは非常に珍しく、たとえあったとしても、飲めない状態であることもある。古いワインがお酢になってしまうのと同じで、古いお茶は塵と化してしまうこともあるのだ。 こうした理由から、プーアル茶の取引では、熟成期間が強力な決め手となる。生産量が少なく、風味もより豊かな年代物のお茶は、若いお茶よりもはるかに高い値がつく。残念なことに、そのためお茶の年代をごまかす悪徳業者も出現するようになり、不正やインチキが横行するようにもなった。なかには、茶葉を包む古い日付の新聞を証拠とする者もいるが、雲南省には古い新聞を巧妙に再現できる印刷業者が数多く存在するので、これは決め手にはならない。また、業者のなかには、雲南省産の茶葉に他の地域の安い茶葉を混ぜる者もいる。 したがって、百年物の茶葉があるといわれたら、大いに疑ってかかるべきだ。二年前、清王朝末期のプーアル茶一四〇グラムが、一九六八年に亡くなった中国人学者の遺品から見つかったそうだ。専門家が鑑定したところ、この茶葉の年代は本物とされ、しかもまだ飲めるとのことだった。このプーアル茶は最終的にオークションにかけられ、二五万ドルで落札されている。このように、非常に古い時代の茶葉が発見されると、飲める飲めないにかかわらず、新聞の見出しを飾るほどのニュースになる。 購入の際に茶葉の年代を気にする人は、売主にいくつかの質問をするべきだ。生産地はどこか? 生産者は誰か? どこで熟成されたのか? 売主はどのようにしてこの茶葉を手に入れたのか? 卸売業者から仕入れた茶葉であれば、業者の名前と本拠地は? 質問に対する答えから、相手が正確な熟成期間を申告しているかどうかある程度判断できるはずだ。 しかし、茶葉の本当の価値は外観と風味に表れるのであり、値段や包装で証明されるものではない。 品質の良いプーアル茶を見分けるときは、餅茶の表面に小枝、カビの斑点(白あるいは濃い色のもの)がないものを選ぶ。茶葉は、できるかぎり完全な形で、見た目にもはっきりと分かる形を保持していなければいけない。乾燥して脆くてもよいが、粉状であってはならない。高品質のプーアル茶は、たとえ乾燥していても、非常に香り高い。お茶を淹れたあとは、茶殻から完全な形で茶葉を取り出せること。不完全な形の茶葉があっても少量で、小枝や実が混じっていてはいけない。雲南省の茶葉は長く幅広で、縁がぎざぎざしているのが特徴だ。茶殻からもこの特徴が確認できなければいけない。葉脈が太ければ、非常に樹齢の高い、しかも野生の茶樹である可能性がある。 自分が飲む茶葉の品質や年代にこだわるのであれば、緑茶を圧縮したばかりの雲南省産の餅茶を買い、自分で熟成させるのもひとつの方法だ。この餅茶を、少々湿り気があり、温度を一定に保った環境で保管する。強い匂いや日光を避け、プーアル茶の特徴が現われるまで最低でも三年は寝かせる。ワイン好きが若いワインを安く購入し、ヴィンテージ物の味が出るまで自分のセラーに貯蔵しておくのと同じだ。 最高品質のプーアル茶の茶葉は、樹齢千年かそれ以上の野生茶樹から収穫される。これは生産量が少ないため、非常に手に入りにくい。次に貴重とされるのが、野生化した古い茶畑から収穫されたものだ。これらの野生化した茶畑は、何世紀にもわたって地元の村の人々が世話をしてきたもので、茶樹の多くは樹齢数百年に達する。もちろん、近年開拓された有名茶企業の広大な茶畑でも、高品質の茶葉が生産されるが、やはり微妙な味わいや香りは、歴史ある茶畑にかなわない。 しかし、値段や年代ばかりに気を取られていては、おいしくお茶をいただくことはできない。味わいや品質を重視してこそ、お茶を飲む喜びが味わえ、末永くお茶を楽しむことができるのだ。 日常の中のお茶
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